鹿児島県日置市の老舗酒造が世界へ挑戦。ジャパニーズウイスキー「KANOSUKE」のブランドムービーを制作しました。
KANOSUKE documentary movie老舗酒造の挑戦
鹿児島県日置市発のジャパニーズウイスキー「嘉之助」のコンセプト動画を制作しました。製造者の小正醸造株式会社さまは「小鶴」「蔵の師魂」などの焼酎を主力商品とする酒造です。
「老舗酒造の新たな挑戦として、鹿児島から世界へ羽ばたくジャパニーズウイスキーを作りたい。」
ウイスキー作りはこのような思いから始まったとのことです。
ウイスキーの「変数」
企画に際し、私たちが注目したのはウイスキーの持つ「変数」の多さでした。
世界には様々なウイスキーが存在します。シングルモルト、ブレンデッド、スコッチ、アイラ、ワインカスク… 生産地、原料、製造・熟成方法などにより、それぞれのウイスキーの個性が生まれます。
その複雑な要素が相まって、一つのウイスキーの味わいが生まれる。
世界基準で正式に「ウイスキー」と認められるには、最低3年の熟成期間が必要です。私たちが企画を開始したのは、発売まで1年以上が残った時期でした。
まだ商品自体が存在しない、その時期に発信をする意味を考えました。そこでたどり着いたのが「嘉之助ウイスキーが発売に至った際、その一口目の味わいをより深くできるような動画を作ろう」というコンセプトでした。
ウイスキーの「味」を動画で伝えることはできません。しかし、前述の変数、つまり「水」「樽」「蒸留機」「土地」「技術」「人」「歴史」などの様々な要素を動画で伝えることで、ウイスキーを口にする瞬間までの期待を高めることができると考えました。
単に飲むのではなく、その背景も含めてより深く味わえる。そんな動画にしたいと考えました。
知って深める
スタンスが最も重要としているのは「制作前に対象について深く知ること」です。非常に時間がかかりますし、今回のように鹿児島という遠い土地であれば、あまり効率の良いやり方とは言えません。
しかし、私たちにとっては「知ること」が全ての企画の入り口となります。小正醸造のスタッフさんへのインタビューや、鹿児島県日置市の土地・環境・歴史についての調査を行いました。
日置市という土地
薩摩半島の西岸に位置し、東シナ海に面する日置市は、スコッチウイスキーの本場「アイラ島」を彷彿とさせるロケーションです。
また、日本三大砂丘の一つである吹上浜、薩摩焼の郷として知られる美山を持ち、古くから豊かな自然の恵みの中でものづくりが行われてきた土地でした。
ウイスキーの生産地としては比較的温暖な地域ですが、冬の時期には海からの厳しく冷たい潮風を浴び、年間を通すと寒暖差が大きく、日本固有の四季の移ろいをしっかりと感じる土地です。
熟成の際にどのような温度になるのか、そしてどのような風を浴びるのか。これらは原料や樽の素材と同じく、ウイスキーの味を変える変数となります。
老舗酒造の持つ歴史
小正醸造の代表作の一つ「メローコヅル」は、同じ蒸留酒であるウイスキーの樽熟成にルーツを持つ焼酎でした。焼酎の製造に蒸留酒の工程を入れることによって、他とは違う味わいを表現していたのです。
そして、現在の嘉之助蒸留所の土地は、2代目小正嘉之助が「メローコヅル専用の蒸留所を建てよう」と決意し、道半ばで諦めることになった土地でした。
長く「焼酎の会社」として商品開発と製造を行い、その地位を確かなものにしてきた小正醸造。そんな会社が、先代の夢を継ぎ、世界へ羽ばたくウイスキーを目指す挑戦を始めました。
撮影当日
極寒の中、早朝の撮影が開始しました。最初に撮影したのは「冬」というテーマの動画です。先述した通り、この土地や、歴史や、人の全てがウイスキーの味をつくる変数となります。
ウイスキー製造に携わる人々が毎朝目にする冬の朝の景色さえも、ウイスキーの変数の一つと言って良いのではないか。そんな気持ちで「冬」の撮影に臨みました。
「何としてでも朝焼けを撮りたい。」
謎のこだわりを持ち、震えながらその時を待ちました。
その後、蒸留所内外で様々な動画を撮影しました。
完成したウイスキーはまだその場にありませんでしたが、私たちも撮影中に「きっとこんな味なんだろうなあ」と期待を深めていけるような感覚がありました。
ちなみに、帰り際に熟成前(熟成1年)のワインカスクウイスキーをご好意でいただきました。
もちろん、数日で飲み干してしまいました。
完成した動画
合計10本以上の動画を完成させ、順次公開しました。
世界の志に触れること
この撮影は、私たちにとってとても貴重な体験でした。
「世界を目指す」と本気で語れる人が、日本にどのくらいいるでしょうか。
自分の目標について、改めて見つめ直す時間にもなりました。
嘉之助は、熟成3年を経て、2021年に発売されました。ぜひ、動画もウイスキーも味わっていただきたいです。
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- Creative Director
- 智原北斗
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- Film Director / Editor
- 小田雄大
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- Cinematographer
- 小田雄大 / 岩男海誠(スノーマンフィルム)
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